熟れた果実の誘惑
まなざしの誘惑 グラスを持つ手が、ふと止まる。 四十年の歳月が、指先に宿る。 あなたの若い視線を、私は知っている。 だけどわざと、気づかないふりをするの。 熟れた果実のような、深いルージュ。 鏡に映る自分に、小さく微笑む。 若さだけが武器だなんて、誰が決めたの? この余裕こそが、今の私の誇りよ。 ほら、あなたはまた私を見つめてる。 揺れる琥珀色の液体越しに、 ほんの少しだけ、視線を合わせてあげる。 慌ててそらす、あなたの青臭さが、 たまらなく愛おしくて、クスリと笑う。 さあ、この視線の意味がわかるかしら。 言葉の駆け引き 「お若いですね」なんて、退屈なセリフ。 そんなお世辞は、もう聞き飽きたわ。 私は私の時間を、心から愛しているの。 重ねた傷も、すべて美しさに変えて。 あなたは少し背伸びをして、背筋を伸ばす。 私を「一人の女性」として、口説くつもり? その真っ直ぐな言葉、嫌いじゃないけれど。 大人の恋には、もっと段階があるのよ。 「子…