ミステリアスおばさんの幻想

夕焼けが染める、自宅のベランダ 干されたシャツの、影が揺れる午後 特に何があるわけじゃないけれど 心はふわり、どこか遠くへ 古びた籐椅子、軋む音を友に 淹れたてのコーヒー、湯気が立ち昇る 今日の出来事を、ぼんやりと辿り ふと、現れるの、幻想の欠片 若い頃夢見た、華やかな舞台 スポットライト浴び、喝采を浴びる私 今はただの、日々の繰り返し でも、心の奥底、消えない煌めき 異国の王子様、突然現れて 甘い言葉で、私を誘うの ありえないこと、わかっているけれど 少しだけ、夢を見させてほしい 昔好きだった、あの優しい歌 風に乗って、ふいに聞こえてくる 忘れていたはずの、熱い想いが 胸の奥で、そっと蘇るの 誰もいない部屋、聞こえるはずのない 子供たちの笑い声、楽しそうな歌 遠い記憶の、優しい残像 いつまでも、心にあたたかい光 庭の片隅の、小さな花壇 見慣れたはずの、紫陽花の色が 今日はなぜか、深く鮮やかに 秘密を抱えた、宝石のよう もしもあの時、違う道を…