返事の来ないポスト
冬の寒さが本格的になった十二月の午後、商店街の端っこにある木漏れ日文具店の店主・秋子さんは、古いストーブの上でお湯を沸かしていました。 この店は、今時珍しいほど時間がゆっくり流れています。並んでいるのは、どこか懐かしい色使いの便箋や、握り心地のいい万年筆。そして、店の奥には返事の来ないポスト」と呼ばれる、小さな木箱が置かれていました。 ある日、一人の青年が店にやってきました。名前は健斗。都会の会社で疲れ果て、数年ぶりに帰郷したばかりの青年です。彼は手持ち無沙汰に店内を眺めていましたが、やがて奥の木箱に目を留めました。 「これ、なんですか?」 「それはね、伝えられなかった想いを預かるポストよ」 秋子さんは穏やかに微笑みました。 「宛先が分からなかったり、もう会えない人だったり。出す宛てのない手紙をここに置くと、少しだけ心が軽くなるって言われているの」 健斗は鼻で笑いました。「そんなの、ただの気休めですよ…