R&Bの生
泥と祈り はじめに、鼓動があった。 言葉よりも先に、土を踏みしめる足音が、 あるいは綿花畑に落ちる汗の滴りが、 不規則なビートを刻んでいた。 R&Bの生は、日曜日の朝と土曜日の夜の間に生まれる。 きれいにプレスされたシャツの襟と、 泥にまみれた作業靴の隙間に。 かつて神へと捧げられた、喉を引き裂くようなシャウトは、 教会の重い扉をこじ開けて、 舗装されていない道へと溢れ出した。 「主よ」と叫んでいた唇は、いつしか「愛しい人よ」と形を変える。 けれど、その震え方は同じだ。 救いを求める切実さは、魂の重さは、 聖書からレコード盤へと場所を移しても、 何ひとつ変わりはしなかった。 ミシシッピの濁った川の流れが、 コンクリートの地下を走る地下鉄の轟音へと変わる時、 ブルースは加速し、リズムを手に入れた。 それは単なる音楽のジャンルではない。 それは、痛みを踊り明かすための生存戦略。 涙をリズムに乗せて蒸発させるための、 人類が発明…