青春の記憶と心の風景
窓を開けると、かすかに聞こえてきたレコードの音。それは、ただの音ではなく、私の青春そのものだった。夏の午後は、蝉の声と混ざり合うように、ラジオから流れてくるポップスが部屋中に溢れていた。恋の始まりを告げるような甘いメロディーは、まだ見ぬ未来への期待と、同時に切ない心の震えを呼び起こした。友だちと自転車に乗りながら、ヘッドホンから聴いていたロックは、若さゆえの反逆心と、どこまでも広がる自由への憧れを歌っていた。 卒業式の日に歌った合唱曲は、クラスメイトとの別れを惜しみ、未来への誓いを込めた宝物。あの日の歌声は、今でも心の奥底に響いている。歌詞の一つ一つが、当時の私たちの心情と重なり、卒業という大きな転換期を迎える私たちの心を揺さぶった。 就職して都会に出てきた時、初めての一人暮らしの部屋で、故郷のラジオ番組を聴いた。懐かしい声が耳に飛び込んできた瞬間、私は故郷の風景と、そこで過ごした日々を鮮や…