薔薇を考える熟女

深い午後の光が窓辺に差し込み、 レースのカーテンが柔らかな影を落とす。 一輪の真紅の薔薇が活けられ、 熟女はその艶やかな花を見つめる。 指先がそっと花びらに触れると、 ひんやりとした感触が伝わる。 庭で丹精込めて育てたその薔薇は、 最も美しい瞬間を迎えていた。 彼女の瞳には時の流れが刻まれ、 喜びも悲しみも静かに横たわる。 若い頃の情熱的な日々や恋、 全てがその瞳の奥に宿る。 薔薇の花びら一枚一枚が記憶の頁、 過去の自分が脳裏をよぎる。 あの頃の自分はもっと鮮やかだったか、 無垢な蕾の存在だったか。 唇に静かな笑みが浮かぶのは、 若き日を懐かしく思うから。 未来が無限に広がると信じ、 時には棘のように振る舞った。 今は違う、棘はもう意識されない。 花びらの柔らかさ、香りの深さ、 根を張る力強さに目を向ける。 歳月が余計なものを削ぎ落とした。 薔薇の香りが部屋に満ちる。 甘く、そしてどこか切ない香り。 弾ける瑞々しさはないけれど、 熟成された…