ロマンティックおばさんの秋 結城永人 -9月 21, 2025 紅葉の絨毯をゆっくりと踏みしめてかつて愛した人の影を探している遠い日の約束は風に溶けて消えたけれどこの胸の奥にはまだ温かい灯がともる カフェの窓辺でカプチーノを傾けて過ぎ去った時間をそっと手繰り寄せているあの頃の私はもっと無謀で輝いていて傷つくことさえ恐れなかった若さ 読みかけの古い小説をそっと開いてページの間に挟まれたドライフラワーを見る枯れた花弁に刻まれた想い出は色褪せることなく鮮やかに咲き続ける 日暮れの公園でブランコに腰かけて錆びた鎖が奏でる寂しいメロディを聞く子供たちの笑い声が遠く聞こえてきて私の心に静かな波紋が広がる アンティークショップで見つけたレースのハンカチ繊細な模様に宿る誰かの愛しい記憶触れるたびに蘇る甘く切ない香りまるで私の人生そのものみたい 夕焼け空に浮かぶ一筋の飛行機雲あの人は今どこで空を見上げているだろう同じ景色を違う場所から見ていると信じてそっと心の中で名前を呼んでみる 駅前のベンチで待ち合わせをする若いカップル初々しい恋の光景に目を細めて微笑む私もあんな風に誰かを想っていたんだと懐かしい気持ちが込み上げてくる 古着屋で見つけたツイードのコート少しだけ毛羽立った生地が私に語りかけるこのコートが巡ってきたたくさんの物語を私もこれからの人生で紡いでいきたい 深夜のキッチンでワインをグラスに注いで今日の出来事をゆっくりと反芻している誰にも見せない私だけの時間静かな夜がそっと包んでくれる 枕元に置いたアロマキャンドルに火を灯すローズマリーの香りが部屋に満ちていく疲れ切った心と体を優しく癒して明日への活力をそっとチャージする 週末の朝は少しだけ早起きをして近くのパン屋さんまで散歩に出かける焼きたてのパンの香りに誘われて小さな幸せを両手に抱きしめる 図書館の静けさの中でページをめくる歴史小説の中に迷い込んだ気分遠い時代を生きた人々の情熱に触れて私の知らない世界が広がっていく 雨上がりのアスファルトに映る街灯滲んだ光が幻想的な模様を描く水たまりを避けて歩くつま先雨の匂いが心を落ち着かせる ベランダで育てる小さな鉢植えのハーブ新しい葉が芽を出し、太陽に向かって伸びる小さな命の力強さに励まされて私ももっと前向きに生きていこうと思う デパートの化粧品売り場をぶらぶら歩く流行のリップの色を試してみるほんの少しの勇気を出してみたら新しい自分が鏡の中に現れた 友人の結婚式の招待状が届いた幸せそうな笑顔の写真に胸が温かくなる祝福の言葉を考える時間私も誰かの幸せを心から願える 一人で入った映画館の暗闇の中スクリーンに映る悲しいラブストーリーに涙する隣にいる誰も私の涙に気づかない一人で泣けるこの時間が好き デパ地下で買った少し高価なマカロン色とりどりの小さな宝石みたい一口食べるたびに広がる甘い幸福自分を甘やかすことも時には必要 美術館でヴァン・ゴッホの絵の前に立ち尽くす燃えるような黄色に心が震える狂おしいほどの情熱が描かれた筆跡に私の心の奥も熱くなる 行きつけの喫茶店のマスターに挨拶する「いつもありがとうございます」の一言に心がほっと温かくなる私はここにいてもいいんだと思える 新しい趣味を見つけるために習い事を始めた初めての陶芸教室で粘土をこねる不器用な手つきで形作っていく器に私の今の人生が映し出されている 仕事帰りに花屋さんに立ち寄る淡いピンク色のバラを一本だけ買うシンプルな花瓶に活けて部屋に飾るたった一輪でも部屋が華やかになる 夜風に揺れるカーテンを見つめてあの人と最後に交わした言葉を思い出す「またいつか」と言って別れたけれどその「いつか」は来ないことを知っている スマートフォンに保存されたたくさんの写真若い頃の私の笑顔がそこにあるあの頃には見えなかった景色が今の私には鮮やかに見えている 鏡に映る自分の顔をじっと見つめる目尻のシワも少しだけ増えたけれどこのシワが刻んできた物語を私は誇らしく思っている 秋の夜空に浮かぶ満月を見上げる欠けることも満ちることも繰り返して私も少しずつ変わってきたでもこの心は何も変わらない 新しい出会いを求めて街に出るたくさんの人々の波に紛れて私もまた誰かと繋がっていくそう信じているから歩き続けられる 古いアルバムを整理していると色あせた写真から声が聞こえてくる「大丈夫、あなたは一人じゃない」と遠い過去の私が微笑みかける 秋風が私の髪を優しく撫でていく頬を染める夕日の色に染まりながら私はまた一歩を踏み出すロマンティックおばさんの秋は続く YouTubeロマンティックおばさんの秋 コメント 新しい投稿 前の投稿
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